ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)とその子会社であるHAPSモバイル株式会社(以下「HAPSモバイル」)は、成層圏通信プラットフォーム(High Altitude Platform Station、以下「HAPS」)の移動通信システムの通信エリアの設計およびその他の無線通信システムへの電波干渉量の計算を行うために、2021年10月に両社でITU-R※1の国際標準化に貢献したHAPS向け「電波伝搬推定法」※2を実装した電波伝搬シミュレーターを開発しました。このシミュレーターによって、HAPSのサービス展開に向けた電波伝搬解析をより正確かつ効率的に行うことが可能になります。
HAPSをネットワークインフラとして運用する際には、さまざまな環境下において、成層圏から地上に向けて発信する電波が届く範囲を正確に推定する必要があります。その推定に必要な手法としてHAPS向け「電波伝搬推定法」があります。この推定法は、自由空間※3での基本的な伝搬損失に加えて、大気中のガスの吸収や降雨などの対流圏における損失や、地形による回折損失、植生損失、屋内侵入損失、建物の遮へいなどによるクラッター損失、人体遮へい損失などの伝搬損失の要因を環境に応じて考慮することができます(図1)。
このたび開発したシミュレーターは、ソフトバンクとHAPSモバイルがITU-Rの国際標準化に貢献した、多種多様な伝搬損失の要因を考慮できるHAPS向け「電波伝搬推定法」の計算方法を実装しており、緯度や経度によって異なる気温や降雨の強度などの気象データや、地形や建物などの地理情報を活用して伝搬損失を解析できるため、世界中のあらゆる地域を対象に正確な電波伝搬解析を行うことが可能です。さらに、各地域におけるHAPS機体の位置や基地局のパラメーター(周波数やアンテナパターンなど)に加えて、考慮したい伝搬損失の要因を条件として選択し、電波の受信電力などさまざまな計算結果を基に、電波伝搬解析を行うことができます。
今後、ソフトバンクとHAPSモバイルは、今回開発した電波伝搬シミュレーターを活用し、電波伝搬解析およびシステム設計の検討を行います。両社は引き続き、誰もがいつでも、どこでも安定したネットワークにつながる社会と情報格差のない世界を目指し、HAPS事業を推進していきます。
図1:HAPS向け電波の伝搬損失が起こる要因
図2:シミュレーターを用いて計算した結果の一例(地形の遮へいによる回折損失や、建物の遮へいによるクラッター損失を反映し、受信品質を示す信号対雑音比(SNR:Signal-to-Noise Ratio)※4や受信電力を計算した例)