ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)は、フットプリントの固定を実現するシリンダー形状の多素子フェーズドアレイアンテナ「シリンダーアンテナ」※1を搭載した高高度係留気球基地局を、ソフトバンクグループ株式会社が出資する米国Altaeros Energies, Inc.(アルタエロスエナジーズ、以下「Altaeros」)と共同で開発して、2022年5月に北海道の大樹町多目的航空公園で実証実験を行い、広域で安定した通信エリアの実現に成功しましたのでお知らせします。このフットプリント固定技術※2は、ソフトバンクおよびHAPSモバイル株式会社(以下「HAPSモバイル」)が、成層圏から通信ネットワークを提供するプラットフォーム「HAPS(High Altitude Platform Station)」で安定した通信エリア(フットプリント)を構築することを目指し、研究開発を進めている技術です(図1)。
ソフトバンクは、これまで災害時の通信エリアの復旧などを目的として、係留気球を活用した無線中継システムの開発・実用化を進めてきました。今回、新たにフットプリント固定技術と、Altaerosの高高度係留気球「ST-Flex」※3を組み合わせた高高度係留気球基地局の開発に取り組み、従来と比べて気球を高度に係留した他、重量が重いペイロード(通信機器)を搭載しました(図2)。
HAPSのような上空の通信プラットフォームにおいては、無線基地局を搭載した機体が旋回しながら地上に向けて通信サービスを提供します。しかし、機体の旋回により地上に形成される通信エリアが移動するため、ハンドオーバー※4が起こって受信レベルなどの通信品質が安定しないという課題があります。ソフトバンクとHAPSモバイルが世界に先駆けて開発したフットプリント固定技術は、「シリンダーアンテナ」を用いたデジタルビームフォーミング制御※5により、機体の旋回に合わせて動的に電波の向きを制御し、通信エリアを固定させてこの課題を解決するもので、上空からの通信ネットワークの提供に必要不可欠な技術です(図3)。
北海道の大樹町多目的航空公園で実施した実証実験では、「ST-Flex」を高度249mに係留させて通信試験を行い、見通しが良い環境下においては最大数十kmの距離※7で広域な通信エリアが確保できることを確認しました。また、風速および風向に応じて係留気球基地局の姿勢や位置が変動する場合でも、携帯端末においてハンドオーバーが発生せず、受信レベルの変動も抑えられ、安定した通信ができることを確認しました(図4)。
ソフトバンクは今後、今回の実証実験を通して得たノウハウやデータを、災害時の通信エリアの復旧やHAPSの通信プラットフォーム構築に活用することを検討していきます。
図1:フットプリント固定技術
図2:実証実験で使用したAltaerosの高高度係留気球(動画)
図3:高高度係留気球基地局に搭載された「シリンダーアンテナ」
図4:フットプリント固定技術の実証実験の結果